税務調査の実績とその背景にある国税庁の方針や意図等に関しても考えてみたいと思います。
①令和3年度の税務調査の実績
法人税と消費税の実施調査件数は、4万1,000件(前年度比163.2%)、申告漏れ所得金額は6,028件(前年比114%)、追徴課税2,307億円(前年度比153.6%)となりました。
源泉徴収税の実施調査は、4万8,000件(前年度比166.3%)、非違があった件数は1万5,000件(前年度比153.6%)、追徴課税228億円(前年度比156.7%)となりました。
実施調査の件数は、新型コロナの影響で新規の税務調査が中止された令和2年度より増加し、回復傾向にありますが、依然として低水準です。一方で、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を優先して調査した結果、追徴税額の総額はコロナ前の水準に近接しました。また、文書等による接触方法を積極的に組み合わせることにより、簡易な接触による申告漏れ所得金額、追徴税額は増加しました。
②注目!海外取引法人や富裕層への税務調査
国税庁の税務調査に関する主要な取組は、消費税還付申告法人に対する取組、無申告法人に対する取組など多岐にわたりますが、令和3年度に注目すべきは「海外取引法人や富裕層への調査に注力している」ということに対してです。
この背景には個人投資家による海外投資の増加や、企業の海外取引の複雑化によって、取引の実態の把握が困難になっていることが挙げられます。そのため、国税庁は有価証券や不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人や法人等に対して、資産運用の多様化や国際化がすすんでいることを念頭に積極的な調査を行っています。
加算税や延滞税などのペナルティを課せられないためにも、今一度確認しましょう。