今回は法務省が行っている、「自筆証書遺言書保管制度」に関して考えてみたいと思います。
①公正証書遺言と自筆証書遺言の違いとは
公正証書遺言は、遺言者本人が遺言の内容を口頭で公証人に伝え、公証人がその内容を文章にまとめます。公正証書を作成する際には、証人として2名以上の立ち合いが必要です。また、公証人手数料が政令で規定されており、相続財産の金額に応じて定められております。公正証書の原本は、公証役場に保管されます。そのため遺言書の紛失・変造・偽造などのリスクは、ほぼないといえます。
一方で、自筆証書遺言は15歳以上の遺言者本人が遺言書の全文、日付及び氏名を自書さえできれば一人で作成が可能であり、証人は不要です。また保管場所は、遺言書本人で決めることができます。自宅に保管しておいたり、信頼できる第三者に保管してもらったりと、自由に決めることができます。しかし、自由に決められるゆえに、保管場所を忘れてしまったり、相続人が遺言書を発見できなかったりというリスクもあります。遺言書の書き換えや偽造されるリスクもあります。
②「自筆証書遺言書保管制度」
自筆証書遺言のメリットを損なわず、問題点を解消する方策として、法務省より令和2年7月10日に、自筆証書遺言書とその画像データを法務省で保管する「自筆証書遺言書保管制度」が施行されました。法務局で、遺言書の原本と、その画像データが保管されるため、紛失や偽造、改ざん、盗難のおそれもありません。それにより、遺言者の生前の意思が守られます。また、民放が定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて法務局職員が確認するため、外形的なチェックが受けられます。他にも様々なメリットが挙げられます。この保管制度を、ぜひご活用の検討をされてもよいのではないでしょうか。